第15回:有効性と能率、誘因と貢献

今回は、組織の有効性と能率、および、誘因と貢献についてご説明します。

バーナードは、組織の3つの要素が、組織の成立に必要なものであることから、組織の3つの要素が維持できるよう、組織と組織の外部の状況との関係を調整し均衡させなければならないと述べています。これに関し、バーナードは、「有効性」と「能率」という考え方を使って説明しています。

まず、有効性とは、組織の目的を達成する能力や度合いを指します。組織は、共通目的があることで成立しているわけですから、目的が達成できない状態のときや、目的が達成してしまったときは、組織が存続する意味もなくなります。

つぎに、能率とは、組織の維持に必要な貢献を得るための誘因を提供する能力のことです。能率の具体的なものは、会社でいえば、従業員への給与などの金銭的な誘因だけでなく、地位、やりがいといった、非金銭的な誘因も含まれます。

例えば、給与が少ない会社(=能率の低い会社)は、金銭的な誘因が低いために、従業員の士気がさがったり、退職されたりする可能性が高く、会社の事業に悪い影響を与えることにつながります。そこで、経営者の方は、給与を高くしたりやりがいを与えたりして、従業員の士気をあげたりする必要があります。

とはいえ、従業員の給与を高くするだけでよいのかというと、そう単純なわけではありません。給与を高くし過ぎた結果、会社が赤字になってしまえば、投資家が出資してくれなくなったり、銀行が融資をしてくれなくなったりします。そこで、従業員の給与を上げる代わりに非金銭的な誘因を増やしたりするといった工夫が求められます。

そして、このような、有効性、能率、誘因と貢献のバランスをどのようにとるか、すなわち組織の均衡を図ることは、経営者の重要な役割です。

詳しくは、番組をお聴きください。

また、「図解でわかる経営の基本いちばん最初に読む本」をお持ちの方は、第2章第4節「組織を調整し均衡させるためにはどうするか」(40ページ)もご参照ください。

第14回:組織の3要素

今回は、組織の3要素についてご説明します。

バーナードは「お互いに意思を伝達できる人々がいて、その人々は活動することによって貢献しようとする意思を持ち、共通の目的を成し遂げようとするときに、組織は成立する。したがって、組織の要素は、コミュニケーション、貢献意欲、共通目的である」と述べています。

組織は、ひとりでは達成できないことを複数の人が集まって成し遂げるときに必要とされるものですから、まず、その集まった人々にとっての共通の目的があるということになります。そして、その共通の目的を成し遂げるために人々が集まるわけですから、その人たちが自分を犠牲にして目的達成のために貢献しようとする意思があるということになります。

そして、共通目的と貢献意欲の間に入り、両者を結びつけるものがコミュニケーションであるとバーナードは述べています。すなわち、共通目的がどういうものかがコミュニケーションによって人々に伝わらなければ、貢献意欲は得られないということです。

詳しくは、番組をお聴きください。

また、「図解でわかる経営の基本いちばん最初に読む本」をお持ちの方は、第2章第3節「組織の3要素とはなにか」(38ページ)もご参照ください。

第13回:協働システム

今回は、協働システムについてご説明します。

協働システムとは、組織論研究の第一人者である、バーナードの提唱した概念で、一般的に言われている会社組織のことです。

この協働システムは、さらに、物的システム、社会的システム、人的システム、(バーナードの定義する狭い意味での)組織のサブシステムで構成されています。

バーナードの定義する「組織」とは、一般的に使われている組織とは異なり、「2人以上の人々の、意識的に調整された諸活動、または、諸力のシステム」と定義されています。すなわち、バーナードの言う組織とは、人々の集まりではなく、人々が集まりの中で動くしくみを指しています。

詳しくは、番組をお聴きください。

また、「図解でわかる経営の基本いちばん最初に読む本」をお持ちの方は、第2章第2節「協働システムと組織のつながり」(36ページ)もご参照ください。

第12回:全人仮説

今回は、全人仮説について説明します。

組織論の研究の第一人者である、バーナードは、組織に属する人に影響を与える要因は、物的要因、生物的要因、社会的要因の3つがあるというとらえ方、すなわち、全人仮説を唱えています。

一方で、伝統的な考え方では、会社で働く人々は、給与や労働条件のみが影響を与えるという、経済人仮説に基づいて主に研究が行われていました。

いずれも、誤っているものではありませんが、現代は、バーナードの考え方が大きな影響を与えています。

詳しくは、番組をお聴きください。

また、「図解でわかる経営の基本いちばん最初に読む本」をお持ちの方は、第2章第1節「全人仮説、経済人仮説による組織の考え方」(34ページ)もご参照ください。

第11回:フィランソロピーとメセナ

今回は、フィランソロピーとメセナ、および、について説明します。

フィランソロピーとは、ギリシア語のフィラントローピアを語源とする「人間愛」を意味する言葉であり、現代では、社会のために個人や会社が寄付を行ったり、ボランティアとして労力を提供したりする「社会貢献」の意味で用いられています。

メセナとは、即効的な販売促進・広告宣伝効果を求めるのではなく、社会貢献の一環として行う芸術文化支援のことです。

また、かつては、民間では担うことが困難であった公共性の高い事業が、現在では、CSRの考え方が浸透し、民間会社がその論理に基づいても担うことができるようになったことから実現できるようになってきています。このような、私企業と公企業の差がなくなっていく法則を、公私企業接近の原理と言います。

詳しくは、番組をお聴きください。

また、「図解でわかる経営の基本いちばん最初に読む本」をお持ちの方は、第1章第10節「フィランソロピーとメセナとは」(30ページ)、および、「知っとコラム:公私企業接近の原理」(32ページ)もご参照ください。

第10回:投資家向け広報(IR)

今回は、投資家向け広報について説明します。

投資家向け広報は、Investors Relations(IR)活動とも呼ばれ、主に、不特定多数の投資家を持つ、上場会社が、投資家向けに自社の情報を伝え、株主として支持を得るために行う活動です。

このような活動を行うことで、財務情報だけでなく、CSR活動や、独自の経営方針などの、非財務情報も投資家に伝わることになり、自社の株価を維持、向上させることにつながります。

また、中小企業では、不特定多数の株主はいませんが、銀行などの資金提供者に、自社の詳細な情報を伝える、すなわち、情報開示を積極的に行うことで、自社の評価を高めることになり、融資を円滑に、かつ、有利な条件(無担保、低利)で受けることが可能になります。

詳しくは、番組をお聴きください。

また、「図解でわかる経営の基本いちばん最初に読む本」をお持ちの方は、第1章第9節「投資家との関係を強化するIRとは」(28ページ)もご参照ください。

第9回:企業の社会的責任

今回は、企業の社会的責任について説明します。

私企業は、かつては、自社の事業活動に専念すべきであると考えられていましたが、最近は、私企業の社会的な存在が大きくなってきたため、企業市民として、利害関係者と良好な関係を築くことが求められるようになりました。

このことは、かつてのように、自社の事業だけに専念することが、自社の利益を最大化するのではなく、利害関係者からも支持されることが、持続可能性を高め、自社の利益も増加させるということでもあります。

詳しくは、番組をお聴きください。

また、「図解でわかる経営の基本いちばん最初に読む本」をお持ちの方は、第1章第8節「企業の社会的責任=CSRとは」(26ページ)もご参照ください。

第8回:企業統治と内部統制

今回は、企業統治と内部統制の概要、および、それが注目されるようになった背景について説明します。

企業統治や内部統制は、日本では、経営者や従業員が法令違反をしないようにするための仕組みと考えられがちですが、それだけでなく、株主の意思に基づいて活動が行われているかどうかを確認するための仕組みです。

日本の上場会社では、経営者の多くが、従業員から昇格しており、経営者の会社に対する忠誠心は高いため、企業統治と内部統制の多くの部分は法令違反などに必要性を感じられることが多いようです。

しかし、米国などでは、いわゆるプロ経営者が経営者となった場合、我田引水の行為をしてしまうことがあるため、企業統治と内部統制の必要性が、より大きなものとなっています。

詳しくは、番組をお聴きください。

また、「図解でわかる経営の基本いちばん最初に読む本」をお持ちの方は、第1章第6節「企業統治=コーポレート・ガバナンスとは」(22ページ)、第7節「内部統制はなぜ重要なのか」(24ページ)もご参照ください。

第7回:マネジメント層の構造

今回は、マネジメント層の構造について説明しています。

マネジメント層、すなわち、経営者は、会社運営に関する意思決定、事業活動に関する業務執行、他の役員や業務の執行状況の監督の3つの役割があります。

しかし、最近の株式会社は、意思決定を行う経営者と、業務執行を担う人たちに分かれるようになってきました。

そのひとつの形態は、執行役員制度で、この制度のある会社では、取締役は主に意思決定を担い、執行役員は主に業務執行を担うようになりました。

さらに、業務執行の専門性を高めた制度が、オフィサー制度です。オフィサー制度では、意思決定を取締役が担う一方で、専門性の高いオフィサーが、それぞれの専門分野の業務執行を行います。そのオフィサーの最高責任者が、CEO(最高経営責任者)、業務執行の責任者がCOO(最高執行責任者)と呼ばれたりします。

詳しくは、番組をお聴きください。

また、「図解でわかる経営の基本いちばん最初に読む本」をお持ちの方は、第1章第4節「経営を担う会社の機関とは(1)」(18ページ)、第5節「経営を担う会社の機関とは(2)」(20ページ)もご参照ください。

第6回:所有と経営の分離

今回は、所有と経営の分離がテーマです。

かつての会社は、経営者は自ら生産設備などを購入し、従業員を雇って経営をしていました。すなわち、経営者は会社の所有者でもあったわけです。

しかし、事業規模が拡大していくと、経営者以外の人からも出資をしてもらう(会社の所有者になってもらう)ようになりました。これが発展していった会社が上場会社ですが、このような会社は、経営者が必ずしも会社の所有者ではなくなりました。

さらには、経営者は、事業運営より、経営そのものに特化した役割を担う必要が高まり、いわゆる専門経営者という人たちが現れるようになりました。すなわち、社長は、事業に精通している従業員が昇格する例が一般的でしたが、いまでは、必ずしもその会社の事業に精通していなくても、専門性の高いマネジメントを担う人が経営者として活躍するようになって来ています。

詳しくは、番組をお聴きください。

また、「図解でわかる経営の基本いちばん最初に読む本」をお持ちの方は、第1章第3節「所有と経営の分離とは」(16ページ)もご参照ください。